そのままほっぽり出して「はやく行くぞ」って言われる覚悟くらいはできていたんだけど。
廉士さんの行動は、わたしの予想に反していた。
反するどころじゃない。
予想も想像もしていなかった行動を、された。
「へっ、わ、ひぇあ……!?」
変な声さえも出てしまったのは、身体がふわっと浮いたから。
行き渡る酸素がすくないせいで頭もふわふわしてるし、そのうえ身体までふわふわしてしまう。
だから気づくのに時間がかかってしまった。
廉士さんがわたしを抱き上げてくれた、なんてことに。
「うっわ。軽すぎて引く」
「ひ、引かないで……」
ぐっとかすかに身をよじる。
抵抗する力があるほど回復しているわけじゃない。
「動くなよ。落とすぞ」
「落とすというか、下ろしてくれていいんですが……」
「どうせまともに歩けないだろ」
「うっ」
ごもっともだ。
いまのわたしは俗にいうお姫様抱っこをされている。
お姫様でも何でもないわたしが、お姫様抱っこを。
胸がどきどき鳴ってるのは走ったせいであって、この体勢のせいじゃない。
と、思う。



