「そういえば美矢、ケンゴのチャンネル凄いね?聞いた?」

「うん。ケンゴの編集凄すぎて伸びてるんだって?」


僕の質問に、まるで他人事のように答えた美矢は、味の染みた豆腐を「あちち」なんて言いながらレンゲで口の中に放り込む。

ケンゴが編集した美矢の弾き語り動画は、あの後ケンゴの猛アプローチに折れた美矢の許可が降り『旅猫少女』という動画チャンネルを開設して、全世界へアップロードされた。


チャンネルはケンゴのお母さんの協力の元開設され、未成年収益化問題はケンゴらしく用意周到にクリアされている。

ちなみに、SNSも同時開設し、そちらはケンゴがお世話になってる移住してきたデザイナーさんが協力してくれていて、大人たちのバックアップ体制万全のもと、チャンネル運営がスタートされた。

あの美矢の動画は開設後2日間、じわじわと再生数が伸び、収益化条件をらくらくクリア。あれだけの動画クオリティと美矢の歌声だから、正直ここまでは心配していなかったのだけれど。


「まさか有名人に偶然見つかるとはね。僕は、これに関しては美矢が凄いんだと思うけど」


相変わらずどこ吹く風、みたいな感じなのが勿体なくて、僕がストレートに褒めると、恥ずかしそうに鼻の頭を人差し指でくしくし、とかいた美矢。