どうして仇を打つ相手に、こんなことを思うのか。 何故私は篠谷華月として此処にいるのか。 私には、彼を抱き締められない。 來より先に、私はその目から涙を流していた。 重力のままに伝う雫を拭うこともせずに、光を見る來の顔を目に焼き付ける。 もしも飛鳥が空から私を見ていたとしても、今だけは見ないで欲しいと、切に願った。