「おい、騎士団長殿。ちょっとお茶でも飲んでけ」

そんな暇はないのだが……なんて言い分は、この男に通用するわけがない。仕方なく、椅子に腰を下ろした。
ヒューバートも向かいに座ると、モーリーンがお茶の他にも何やら運んできた。

「これは?」

レモンを薄く切って、何やら加工したものが皿に乗せられていた。

「お嬢ちゃんが作ったものだ。食材は、自分の国の物と大して変わらないらしい。調味料は、種類が少ないとか言っていたが」

「レモンか?」

「そうだ。お前たち騎士は、気温に関係なくそのむさ苦しい服を着て体を動かしているだろ?その中で、体調を崩す奴が少数とはいえ出てしまう。お嬢ちゃんによると、レモンのような酸っぱい物と塩を摂ることで、そういうのが防げるんだとさ」

「レモンで……」

よくわからない話だが、出されたレモンを口にしてみる。蜂蜜の甘みの中に、わずかな塩味を感じる気がする。レモンの酸味のおかげで、甘すぎずさっぱりしていて食べやすい。