「サイラスとお手合わせしていただきました。打ち負かしたとは、胸を張っては言えません。ブラッド様にも指摘されましたが、途中、隙がたくさんありましたので」

「なかなか謙虚なことを言うな」

「謙虚さをなくしたら、成長できないと思っていますから」

ユーリの言葉に、内心では感心していた。そんな考え方のできる女性がいることに、正直驚いた。と同時に、自分の元に持ち込まれる見合い相手の面々を思い浮かべる。

親の身分を、まるで自分の手柄であるかのようにして、傲慢に振る舞う有力貴族の令嬢。これでもかと、宝石類と豪華なドレスで着飾り、自分のことすら自分でやろうとしない、呆れてものも言えぬようなそのありさま。

それに比べて、今目の前にいるユーリはどうだろうか。着飾るどころか、男物の衣服に身を包み、騎士に混じって剣を握っている。しかも、自ら志願して。おそらく、芯のある女性なのだろう。

「そういう考え方は、とてもよいな。どうだろう。私も一つ、手合わせ願いたいのだが」

ユーリは判断を仰ぐように、ブラッドに目を向ける。