「あれか」

ブラッドとともに、建物の陰から騎士達の様子を見ていた。

「はい。本来は中庭に出る程度の許可をと思っていましたが、騎士達を見たユーリが自らやりたいと申し出ましたので」

先日、調理場で見かけた時は、侍女達が着るようなシンプルな女性ものの衣服を身につけていたけれど、今は男性用の簡易なものを身につけている。騎士達とは、早くも打ち解けつつあるように見える。おそらく、昨日見せたという剣技が、ブラッドの言うようになかなか迫力のあるものだったのだろう。

「ブラッド、着替えてくる。私もユーリと手合わせ願おう」

「これからですか?」

「そうだ。予定が一つキャンセルになった。面談をと思ったが、王太子と言わずクリスとして対面するのもよいだろう」

「わかりました」

クリスとはお忍び姿の時の名で、騎士達の間のみ、その名を言えばことは通じる。
ブラッドはおそらく、私の行動を訝しく思っているのだろう。でもそこはさすが我国の騎士団長。一切表情に出すことなく、騎士達の元へ向かった。