ブラッドの言葉に頷き、サイラスと向かい合わせに剣をかまえた。防具はないけれど、ないならないで、やられる前にやってしまえば問題ない。私の中に、恐怖心はなかった。ブランクがあるとはいえ、長年の実績が後押ししてくれる。

「はじめ」

ブラッドの合図で、剣を握る腕に力を込めた。サイラスの出方を見ようと、じっと見据えたまま我慢する。
サイラスもじりじりしながらこちらを睨みつけるように見てくる。

相手の身長は、私よりも少し高いくらいだ。力ではあちらの方が強いだろう。正面からストレートにいくのは危険だ。隙を見て踏み込むのがベスト。そのタイミングを、息を潜めて見極める。

しばらくお互いに睨みつけていると、限界がきたのか、サイラスの目がほんの一瞬泳いだ。
いまだ。
鋭く踏み込むと、小手を狙うようにサイラスの剣を振り落として、その横を駆け抜ける。防具を付けていれば、胴も狙ったところだけど、そこまではしない。素早く振り返って、再び剣を構える。
サイラスは、なにが起こったのかわからないという顔で、こちらを振り返った。