「ブラッド、あの異国の女は何をしているんだ?」

二階の渡り廊下で足を止めたルイスは、料理場を見下ろしている。ここのところ、ルイスはこの渡り廊下を通る時、足は止めないまでも目線を調理場に向けていることに気付いていた。
その目の先にいるのは、笑顔を浮かべたユーリだ。調理場の担当者達と、随分打ち解けたようだ。

「先日、ルイス様の許可をいただいて、ヒューバートにユーリを託しました。なんでも、料理の作り方をまとめているようです。誰が調理しても、同じレベルの料理を作れるようにとのことで」

おそらく、自分もルイスも同じことを思い起こしているだろう。数ヶ月前、ヒューバートが珍しく体調を崩していた時のことを。

常日頃、本人自ら丈夫が取り柄だと言っているように、これまでヒューバートは体調を崩すことはほとんどなかった。それだけに、彼が3日も休みを取ったのは衝撃的だった。まあ、本人は這ってでも料理をするつもりだったらしいが。他人にうつしてはいけないと、モーリーンが必死に休ませたというのが本当のところだが。