朝になってようやく、昨夜連れ帰った女が目を覚ました。その女は名をユーリと言う。身体に怪我などはなく、頭を打った覚えもないと言うものの、話す内容は要領を得ない。とはいえ、嘘をついているようには見えなかった。

「犬の夢を見て、気付いたらここにいた……そんな話を王太子にどう伝えろというのだ……」

思わずため息が溢れる。 
でも、しかたがない。そのまま伝える以外はない。
この時間なら、執務室におられるはずだ。さっそく、ユーリと名乗る女の話を報告するために、足早に向かった。








「失礼します。今よろしいでしょうか?」

「ブラッドか。かまわない。入ってくれ」

ルイスの許可を得て、執務室へ足を踏み入れる。ルイスは机に向かって書類に目を通していたようだ。その姿勢を崩すことなく、声だけをこちらに向けている。