「失礼します」

食べ終わってしばらくした頃、再びライラ戻ってきた。なんだか、彼女の顔を見ただけでホッとしてしまう。見知らぬこの土地で、ライラの存在は早くもよりどころになっている。

「食べ終わりましたか?」

「ええ。とても美味しかった」

「それは良かったです」

空になった食器を見て、ライラの顔にわずかに笑みが浮かぶ。

「私ね、元いたところでは食に関する仕事をしていたの。健康になれるメニューを考えたりね。このお料理、すっごく美味しかった。どんなふうに作っているのか、教えてもらいたいぐらいだけど……異国から来た得体の知れない私には無理かなあ……」

「どうでしょう……今日はこの後、ブラッド様がいらっしゃると思います。そのことを話してみたらいかがですか?」

ブラッドがやって来る……

こうして、お風呂や食事を提供してもらえたぐらいだから、まさかいきなり殺されるようなことはないと思うけど……この国に滞在していいと言われるとは限らない。こんなお願いは非常識だった。
ちょっとだけ安心し切っていたけど……
この国で初めて顔を合わせた大柄の男を思い出して、不意に不安になってきた。