でも、目の前の大男にジロリと睨まれ、返答を急かされるから、あまりの怖さに求められるまま答えた。

「悠里と呼んでください」

「ユーリだな。わかった。それで、ユーリはどこの国の者か?どこから来たんだ?」

どこから来たのかと言われても、私自身はどこかに行ったつもりはない。ただ仕事を終えて、終電に乗って帰って……あれ?電車に乗ってから、どうやって帰ったんだっけ?わからない。気付けばここにいたというのが正直なところだ。

「あの……よく分からないんです。私、昨日は確か仕事を終えて家に向かったんですけど、そこからの記憶がなくてか。ここはどこなんですか?どうして私はここにいるんでしょう?」

何度考えても、何も思い出せない。
目の前の男は、訝しげな顔でじっと見据えてくる。

「ユーリは昨日、城の外の林の中で倒れていた。とりあえずここへ連れてきて、侍女に着替えさせた」