異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。

「お坊ちゃんじゃないか。こんな所でどうした。忙しいんじゃないのか?」

早速ヒューバートに声をかけられた。
幼い日々、彼の目を盗んでは甘い物をつまみ食いしていたこともあり、今でもこうして揶揄われてしまう。まあ、気恥ずかしくはあるが、この男の前では気を張らずにいられるから咎めはしない。

「ヒューバートに相談があってな」

「珍しいな。どうした?」

「……パンの作り方を教えて欲しい」

「……お坊ちゃん、なんの冗談を言ってるんだ?」

ヒューバートは茶化すというより、本気で私がどうかしてしまったのかと心配してくる。

「いや……冗談ではなくて……ユーリの誕生日に、彼女の好きなパンを焼いてプレゼントしたくて……」

「……はははは。あの女嫌いで有名だったお坊ちゃんが……くっ……はははは……」

「…………」

大笑いするヒューバートにいたたまれず、思わず目を逸らしてしまう。