こうしたユーリの行動は、出会った人々によって、はたまた護衛についた騎士達によって、本人の知らないうちに城の内外に広まっていった。

彼女の首元に光るネックレスが王妃の証だということは、この国の人なら誰でも知っている。次期王妃が自ら体を動かし、汚れることを気にせず人々と関わっていく様は、これまでになかったことで、人々の間に好意的に伝わっていった。

「次期王妃は、とてもお優しい方のようだ」

「こないだうちに来た時に話をしたけど、気取ったとこのねえ、可愛いお嬢さんだったぞ」

「うちの店なんか、あの子が言った通りにレシピを貼り出すようにしたら、売り上げが上がったぞ」

「これまで、孤児院に来てくださる王妃様や貴族の方々はたくさんいました。けれど、子ども達と一緒になって走り回る方は初めてです」

そんなふうに言われていることを、知らないのはユーリ本人だけ。




人々から伝え聞く言葉を、ルイスは自分のことのように喜んでいた。

「ユーリのその心根の優しさ、誠実さに、ますます惹かれてしまう」

と思わず漏らした言葉は、騎士達の間に広まり、彼らもまた、そんなユーリだからこそ、必ず守り通そうと忠誠を誓った。

その一方で、ルイスには秘密裏に動く不穏な噂も耳にしていた。