異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。

確かにここのところ、剣道以外にこういった短剣の使い方から護身術のようなことまで、いろいろなことを教えてもらったけれど……まさか実践するような事態に陥るなんて想像すらしていなかった。

「服の中に隠せるようになっているはずだ」

ブラッドの言う通り、確かにワンピースの内側には、こういうものを隠せるような箇所があった。まさか武器を隠すためのものとは思ってもいなかったけれど……

ブラッドから短剣を受け取ると、恐る恐るしまった。


用意が整うと、促されるまま城内を進んだ。まだ行ったことのないエリアで、だんだん狭く、暗くなってきている。

「ここは万が一の時、陛下をはじめとする王族の方々を逃すためのルートだ。あと、お忍びで王都へ向かうとかな。ほら、クリスが待っている」

ブラッドの指し示す方へ目を向けると、普段とは違ってカジュアルな雰囲気の服を着たクリスがいた。コットンの白いシャツにカーキのズボン。そんな砕けた服装なのに、どことなく高貴な雰囲気が漂っている。