異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。

「陛下、お呼びでしょうか?」

「ああ。こっちへ来い」

近くでその顔色を伺えば、とても調子がよさそうに見える。これは、ユーリが提案したというメニューのおかげなのだろうか?

「お前が保護したという、異世界から来たユーリという女性だが……」

先ほどまで思い浮かべていた〝ユーリ〟の名前に、思わず反応しそうになるが、ぐっと堪えた。

「お前も、王家にまつわる書物を読んだであろう。その昔、異世界から来た人物がいたことを知っておるな?」

「はい。しかし、それが真実だとは信じ難くて」

「だろうな。私とて、書物を読んだだけならそう思ったであろう。だがしかし、紛れもない事実だ」

「と言いますと?」

いつになく真剣に語る陛下の様子に、緊張感が高まる。

「代々、国王となる者にのみ、口頭で伝えられている話だ。書物ではなくな。まさか、自分の関わる代で目にするとは……」