「いやいやいや!!!いやいやいやいや!!!」



屯所に響いた藤堂と永倉の声。

未だに理解が出来ないようで、頭を抱えながら行ったり来たりを繰り返す。


先ほど倒れた多恵という女性はとりあえず屯所に上げて、他の隊士に見つからないように幹部以外出入り禁止の襖の先へと案内した。



「待ってくれよ本当に梓は土方さんの子だったのか!?」


「おかしいと思ったんだよオレ!急にこんなガキ連れて来てさぁ!」



おかしい、それは私の台詞だ。
どうしてこうなったのかすらわからない。

土方さんは隣に私を座らせ、目の前には正座をしながらも未だにしくしくと涙を流す多恵さん。



「いつの子なのよ…」


「…俺が15の時だったかな」



いや絶対無理があるのに。

土方さんは至って真面目に真剣に答えている。

真剣になるところ間違えてるよ土方さん……。



「だ、誰の子よ!」


「………君菊(きみぎく)」



土方さんは指で数えて当てずっぽうに答えた。

私でもわかる。
適当に答えやがったって。


それなのに信じてしまっている多恵さんはきっと、この男の今までの女性遍歴を知っているからなのだろう。



「私と出会ったとき既に息子が居たってわけ…!?」


「…知らなかったんだよ。まさかガキ出来てたなんて思ってねえだろうが」


「ならどうして今更引き取ってるのよ…!」


「…俺なりに責任を取っただけだ」



関わったら絶対に面倒な事この上ないのに、気付けば話はここまでエスカレート。


責任───…。


それ、土方さんが一番言えない言葉なんじゃ……とは飲み込んでおいた。