ギロッ───!



「っ…!」



土方さんは物陰に隠れていた私を簡単に見つけ、そして睨んだ。

…見つかっていた。


変に関わらない方が良さそうだ。
忘れよう。見なかったことにしよう。

邪魔しないようにゆっくりと背中を向け、音を立てないように。


抜き足差し足忍び足の如く、そーっと静かにその場をあとにする。



「おい、そこのクソガキ」



案の定、そう簡単にいくわけがなく。

クソガキなんて私しか居ない。
あとはみんな大人しかいないこの場所。



「てめえだよてめえ。ふざけた合掌しやがったお前だ」



そんな誰も逆らえない鬼の副長にちょいちょいと指で呼ばれてしまえば。



「は、はい…、」



簡単に子犬はしっぽを振って主人の元へ向かってしまうわけで。

そんな子犬を捕まえ、男は女の前に差し出した。


ガシッ───!



「わっ…!」



かと思えばものすごい力で引き寄せられ、ふわっと土方さんの香りが鼻を掠める。

髪が額(ひたい)にかかってくすぐったい…。



「悪いが俺には手のかかるガキが居てよ、これが毎日大変でな」


「そ、その子はまだ子供じゃないの…!それに男の子…でしょう…?」


「だから言ってるだろ。“ガキ”だって」


「…ちょっと、まさか…」



土方さんはポンポンと私の頭をたたく。

まるで爽やかな笑顔を向け、瞬時に愛しいものを見る瞳に変えた。


本当に役者だと思った。

今の一瞬で表情をスッと変えてしまったその人を。




「あぁ。───俺の子だ。」




そんな爆弾発言に女は泡を吹くように倒れた。


そしてたまたま通りかかった近藤さんは腰を抜かし、藤堂さんは「はぁ!?!?」と疑いもなく信じ。

沖田さんはやれやれと首を横に振って。



……え?


─────え……?


─────……え?