「平助、僕の荷物お願い」


「え、ちょ、」


「よし、じゃあ走るよ!」


「あっ待てよ総司!!」



ひょいっと私をおぶると、何事もなかったかのように走り出す沖田 総司。

泥で汚れたってお構い無し。



「これ通り雨じゃねーの総司!」


「だとしてもこんな姿じゃ梓お祭り行けないでしょ!」



パシャパシャと水を跳ね返して、揺れる背中の上で私は初めての景色を見た。

雨なのに藤堂さんも沖田さんも楽しそうに笑っている。


ただ帰る場所に、向かっているだけなのに。


「こんなに汚れちゃったね」なんて沖田さんは笑って。

「また行こーぜ」と、藤堂さんは頭を撫でてくれる。



「…総司?」



屯所がもうすぐというところで、ピタリと動きが止まった。


彼は何かを考えるように、ただ黙ったまま。

その髪から滴る雫が綺麗で、思わず目を惹かれた。



「おいどうしたんだよ総司」



藤堂さんに揺らされてハッと意識を取り戻すと、少しだけ私を見つめる。



「───梓、…君、」


「…?」


「ああ、いや。…なんでもない」