起き上がることも出来ない私を見下ろし、土方さんは同じように上がってくる。

首に巻かれた白いスカーフをスムーズに右手で弛め、ギシッとベッドが鳴った。


1人にしては大きいベッドだなぁといつも思っていた。

どんなに寝相が悪くても床には落ちないと思うくらいに。


でも今は2人、丁度な大きさに落ち着く反面、違う意味でドキドキは増してくる。



「ひ、土方…さん…?」



見たことない眼差しだった。

優しい、優しいのにその中に熱を含んでいて。


でも、なにかを隠している。



「っ…!」



優しく髪をすくわれ、ピクッと肩が跳ねた。

目の前には整った顔。



「ひ、ひじかたさん…?」


「…目、閉じてろ」



逃げ場を無くすように両手で囲われ、スッと通る鼻、切れ長の瞳、形の良い唇は向かってくる。


こんなに綺麗な顔を至近距離で見つめるというのは普通の人は出来ないはず。

だから私は言われたからではなく、反射的に目をぎゅっと瞑ってしまった。



「ばーか」


「っ…!」



パチンッ。


ちょっと痛い…。
どうやらデコピンをされてしまったらしい。

そして何事も無かったかのように隣に寝そべる土方さん。



「…無防備すぎだ阿保。俺以外の野郎に同じ顔しやがったら承知しねえぞ」


「え……、え…?」


「…しねえよ、なんも」



その言い方、なんか私が期待していたような言い方だ。

ちょっとムッとする。


大人の余裕とやらを100%見せつけられたようで、どうにも腑に落ちない。

そんな私に土方さんは再び腕を伸ばした。



「こ、今度は…別に驚かないよ…」



余裕気に笑ってみせる。

頬を撫でたり髪を触ったり、それだけだ。


そんなのは大体予想が出来る。