時代が移り変わる。

もう、幕府の時代は終わるのだ。

何百と長く続いた将軍の時代は幕を閉じようとしている。


新しい時代は俺のすぐ目の前まで来ており、それは未来へ繋がってゆく。



「厳しい戦いになるだろう。…僕達は十分やったさ。なぁそうだろう土方君」


「あんたらしくねえな大鳥さんよ。まだ俺達の剣は滅びてねえだろう」


「だがもう幕府は───」


「幕府の為なんか知ったこっちゃねえよ。俺は武士として、てめえの為に走るだけだ」


「…相変わらず強いな、君は」



後悔など、なかった。


百姓の出の俺が刀を持つこと自体夢みたいなモンだ。

それで今まで走り続けてこれたんだから。


近藤さんも言っていたように───もう十分だった。



「それと大鳥さん、頼みがある」


「君から僕になんて珍しいね。……背けば切腹とでも言いそうな命令が下されそうだ」


「…あぁ。話がわかる男で助かるよ」



それでも1つだけあるとするならば。



「近々小姓が1人離脱する。穴埋めを頼む」



察しの良いこの参謀は、背中を向ける指揮官を止めようとしたが。

それでも振り返って微笑んだ俺に、返す言葉が無かったように押し黙った。



「これを江戸の多摩に住む俺の姉貴に届けてくれ」


「……土方さん、…嫌だと言ったら、どうしますか」


「切腹を申し付ける」



1枚の写真を渡されると、青年は子供のように今にも泣き出しそうだった。


これは最近撮ったもの。

唯一1枚だけ、渡された映写機を器用に扱って梓は「顔が固いよ」と言って笑った。