「すみません、俺の話なんか聞いてもらっちゃって…」


「いや。…お前と話して良かったよ」



今日は驚くことばかりです───。

そう言って鉄之助は微笑みながら部屋を出て行った。



「今更、なんだろうな」



もう勝敗は考えていない、考えない。

だからこそ優しくしたいと思う。
こうして俺について来てくれるお前らに。


ここ数日間、椅子に座って少しの仮眠を取るようにしている。

そうすればいつ梓が目を覚ましたとしても、すぐ気付いてやれるから。

苦しそうな音を聞けば、すぐに汗を拭ってやれる。


笑うだろ総司、あの鬼の副長がそんなことしてんだぜ。



「───…」



こくりこくりと船をこいでいた俺に、微かにだが息を吸う音が聞こえた。

命を吹き返す、そう言うよりは。


「帰って来た」と言う方が正しいか。



「───…ひじ…か……た…さん、」



小さな小さな声は俺の耳へ真っ直ぐに届く。

震える足取りでベッド脇に向かえば、そいつは少しだけ伸ばした手で俺の頬を撫でた。



「……けが、してる…」



なんだよ、おまえ。

なんなんだよ。

こんな状況でも俺の心配しやがって。



「…大鳥さんに殴られた」


「……ふっ、…なぁにそれ」



その手をしっかりと握りしめる。

女は涙を流し、子守唄を歌うかのように、か細い声で続けた。



「わたしね、……あいされていたんだよ、」