「前方用意!!」



馬に乗り、男は右手を高く上げる。



「発射───!!」



バァン───!!
パァンッ!!ダァン───!!


刀ばかりで向かっていたあの頃。

その音を聞くだけで土方さんは眉を寄せ、それでも撤退だけはせず。

どんなときも走り抜け、数多の銃の中でいつも私を助けてくれた。



「よし、落ちたな」



そんな武器を今度は彼が使っている。


刀の時代は終わった。


銃を持つ旧幕府軍の勢力は、新政府軍を圧倒する程に凄まじいものとなっていた。



「後方準備!!泳いで陸地に上がってくる可能性もある、てめえら気ぃ抜くんじゃねえぞ!!」


「「はい……!!!」」



それでも彼は刀を手放さず、何百人の中を突っ走る。

それはまるで勝敗を考えていないよう。


ただ走る───それが最果ての地で彼が決めた道だった。



「時折君…!すまないが弾を運んでくれないか…!」


「はい!すぐに行きます!」



旧幕府軍の拠点に駆け付けてきた大鳥さんは、私に銃弾の入った箱を預けた。

そんな彼でさえも右腕を軽く怪我している。