「私の…役目なのに…」



これは私の特権だった。

どんなときだって、どんなにピリピリとした空気のときだって。

その瞬間だけは彼は私を一瞬だけ見て、微笑みながらお茶を啜ってくれる。


今まで遠くからしか見たことが無かったが、彼女は間近で見るとそれ以上に綺麗な人だった。

すごく大人で、歳も土方さんと同じくらいだろうか。



「時折君」


「…大鳥さん」



旧幕府軍、陸軍参謀である大鳥 圭介(おおとり けいすけ)は土方さんを指揮官に推薦した人物だった。


この人は優しく真面目な人で、土方さんからの信頼も厚い。

私のことも出会った当初から気にかけてくれる1人。



「なにかあったのかい?すごく…うーん、なんて言うんだろうなぁ。
言うなれば、叶わぬ想いを秘めた少女のような顔をしてるよ」


「ぼ、僕は男です…!」



この人は詩人なのか。

人差し指をピッと立てて軽やかに笑う大鳥さんは、こうして私をいつも笑わせてくれているのだって知っている。