脱力する体。

手はパタリと布団に落ち、閉じた瞳は涙を流し。


とても優しい顔をしながら、彼は命の火を消した。



『───…ありがとう』



まるでそう言っているみたいに。


その涙はまだ、あたたかい。

背中に残った温もりは私の中にこの先もずっと芽吹き続ける。




「沖田さん……ありがとう…っ、ありがとう…」




私ね、沖田さんからたくさんのことを教えてもらったよ。

沖田さんとの思い出は楽しいことばかりじゃなかった。

明るい光が当たったと思ったら次は血が広がっているような、そんなもので。



「でも、ぜんぶ楽しかった。…私達は生きていたんだよ一緒に」



この時代で、あの場所で。

そしてこれからもあなたは私の心の中に生きている。


この先もたくさん辛いことや苦しいことがあるはずだ。

それでも沖田さんはずっと傍に居てくれるから。



『泣かないで梓。僕はずっと一緒に居るよ』



穏やかに眠っている彼から、そんな声が聞こえたような気がした。


きっとそっちには近藤さんと朔太郎が居るから。

先に待っていてね。

いつか私が同じ場所へ行けたとき、大好きな笑い声があれば真っ先に向かえるから…。




「…ゆっくり休んでね、沖田さん」




それは、儚くて哀しい約束。

けれどいつだって私を強くしてくれた。


そんな今日の空も浅葱色をしていて。



彼は空へと、



羽ばたいていった───…。