変なの、私が一番新しい顔だったのに。


離隊した者、戦死した者。

朔太郎も居なくなって山崎さんも居ない。
井上さんもだ。

彼等はこの鳥羽伏見の戦いで命を落としていった。


そして私の前から消えてゆく中に、まさか彼もいるなんて。



「眠れないの?」



大阪城の中庭には大きな池があって、月が反射して映る姿を見るのが唯一の楽しみだった。

例え戦の最中だったとしても夜は静か。

たまに遠くで銃声の音がするが、それはすぐに止む。


池の畔に座る私の隣に腰かけた沖田さん。



「明日からまた忙しいんじゃないの?」



今度は甲陽鎮部隊(こうようちんぶたい)として、この未だ冷めぬ戊辰戦争を駆け抜ける。

まるで他人事のように会話を弾ませるこの人にどこか腹が立った。



「…忙しいよ。医療班はもう私くらいしか居ないの」


「…梓も前の怪我は大丈夫なの?」



大丈夫じゃないよ、だからここに居て。

そんな言葉を本当は言いたいのに。


「大丈夫」と、強がることしか出来なくて。