「ここは、死んだあとの世界じゃないんですか…?」



もしかしたらその世界は普通の概念を覆すようなものなのかもしれない。


───過去に来てしまうのだと。



「内臓…飛び出て…助からなかったんです、私は轢かれて死んで、」


「梓、もう大丈夫だ。言わなくていい」



しまったと思った。

せっかくここまで連れてきてもらえたのに、頭のおかしい奴だと思われて捨てられてしまうかもしれない。


温もりは大切に掴んでいないと簡単に消えてしまうものなんだと。



「はっ、死後の世界だ?」



毛布にくるまりながら立ち竦むそんな私に鼻で笑った髪の長い男。

そしてずけずけと近づいて目の前。



「俺達まで勝手に殺してんじゃねえ」



そう言って、もう1度鼻で笑った。



「ったく、あんた。かなり面倒なモンを拾って来ちまったんじゃねえのか」


「そんな事は無いさ。この子はとても寂しい思いをしてたんだと、思ったんだよ」



寂しい───…?


思わず顔を上げた。

隣に立つ近藤 勇の袖をくいっと引いて、見上げるように首を傾げる。




「───寂しいってなぁに?」




男は一瞬目を見開き、そして優しく微笑んで腰を下げると、私の頭を撫でる。

またこの感じだ。

胸の中にホワホワと心地の良い何かが生まれる。