頬を流れた私の涙は赤子のほっぺに落ちて、それに気付いてもっともっと泣き出す。



「…ほら、君のお母さんだよ。そこに寝てるのはお父さん」



母親の傍に寝かせてあげると、小さな掌はその汗ばんだ髪を掴む。

少し軽めの男の子。

いつかこの子はきっとお母さんを守ってくれる。



「……幸せに…なるんだよ」



私は命を助けた。
同時に2つの命を。


この先、辛いこともたくさんあるかもしれない。

それでも必ずいつか君の前にはキラキラと輝く光が現れてくれる。

そして君もまた、誰かを救えるような光になるんだ。


命はきっと、きっとそうやって繋がっている。



「あり、がと…う…っ」



目を微かに開いた母親は、赤子を抱き締めながら涙を流した。

私の髪にも手を伸ばしてゆっくり撫でてくれて。


私が生まれたとき、お母さんもこんな顔をしていたのかな。



「───よくやった、梓」



初めて見た土方さんのこんなにも優しい顔は、いつまでも脳裏を離れてはくれなかった。