妙にくすぐったくて、こそばゆくて。



「軽いな…。着いたら何か他に食べられそうなものをあげよう」


「…もう…お腹いっぱい…」


「そうか?それならいいんだが」



おなか、いっぱいだ。

たったの短い時間の中でもこんなにも優しさとぬくもりをくれたのだから。


あったかくて、やさしくて。



「梓は何か好きなものはあるかい?」


「…すきな……もの…?」


「あぁ、本でも菓子でも。俺はなぁ三國志が好きなんだ」



ずっと聞いていられると思った。

ずっと聞いていたいと思った。


聞いているだけで守られているような気がして。



「はは、…眠くなってしまったかな」



この感情の名前を何というのか、


まだ少女は知らない。