「でも、」



総司は立ち止まる。

俺を見つめ、その背中に乗る少女へと視線を移した。



「…守りたいものが出来ちゃいましたから」



寝返りを打つように梓は微かに動き、ゆっくりと瞼を開くと、目の前に歩く総司を見つめて目を擦った。


夢か、現実か。


間違えないように見極めているみたいで。



「土方さんの背中は寝心地悪かった?交換してあげようか?」


「余計なこと言ってんじゃねえ。…いいからお前は寝てろ」



「うん」と言って力の加わる手。


静かな夜をゆっくりと歩く。

長い、長い夜だった。

今の時間帯がどれくらいなのかも分からないが夜が早く明けてくれと、そう願うよりも。


もう少し全てを隠してほしいと思ってしまうのも、また俺の弱さなのだろう。



「ねぇ土方さん」



こいつはこういう日に限ってよく喋る。

まるで突っ込まれたくない話でもあるかのようだ。

自分が話せば会話は自分の思う通りになるから。