「おい朔太郎」



次は土方さん。

俺個人に話しかけてくるなんて珍しい。
今日は珍しいことばかりや。



「どしたん土方さ───いってぇ…!!」



ドガッ!!っと。


俺の頭に大きな衝撃と、じんじん膨らむ痛み。

副長の鉄拳がこんなにも突然に落ちてきた。



「なにすんねん!!痛いわアホっ!鬼通り越して極悪人や!!」


「うるせえ。てめえ梓を蹴りやがったな」


「は…?」



蹴った…?いつの話や。

あぁ、今朝の雑巾掛けのことを言ってるんかこの男は。


てかもう夕方やってのに、良く覚えてたもんやわ。

俺は忘れてたってのに。



「ガキだとしてもお前は男だろうが。少しは手加減しやがれ」


「なに言ってん土方さん。梓も男やん」


「───…そうだ、あいつも男だ。だが手加減しろ、いいな」



なに言ってるかさっぱりわからへん。

でも頷かなければ、再び拳を握って落とす気満々な土方さんが目の前。



「わかったわかった!もう蹴らへんから!」


「あと飯も横取りすんじゃねえぞ。お前も足りねえなら言え」



そのまま土方さんは去って行った。


そーじより甘い男はここに居た。

土方さんという大きな盾が梓の後ろに立っている。



「もしかしてあいつ、局長の小姓やし……そんなにすごい奴なんか…?」



ぶるるっと身震いさせ、梓にはもう少し優しくしようと心に誓った。

だってそうやなかったら俺が斬られちまうかもしれへんし。



「…咲、兄ちゃん頑張るで」



血が繋がっていなくても家族。

これは俺の友達であり兄のような男が言ってた台詞やで。