「金で解決か。…俺達もなめられたモンだぜ」
土方さんの笑い声が響く。
しかし瞳は明らかに男を真っ直ぐに射抜いており、その額から冷や汗が垂れた。
土方さんのこんな姿初めて見る…。
怒っているのか、面白がっているのか、その本心は読めない。
「1つ聞くが、」
目の前にぷらぷらと揺れる小判を土方さんは奪い、勢いよく男に投げつけた。
「…全く随分と乱暴でんなぁ、新撰組いう輩は」
「黙れ。打撲数ヶ所、右目負傷、右腕骨折。…これはてめえの仕業か?」
ピリリ…。
空気が一瞬にして凍った。
それでも男はお構い無し。
ははははっと高らかに笑って「正当防衛や」と、言う。
「なにが正当防衛だよ…!あんたと梓の傷じゃあ全然違うだろ…!!」
こんなふうに声を上げる沖田さんも珍しい。
それでもやっぱり嫌味ったらしく唇の傷を撫でてニヤリと笑う男。
すると今度は土方さんが鼻で笑った。
「こいつは誰かさんと違って理由なく手ぇ上げるほど馬鹿じゃねえがな」
「ははは、言ってくれますねぇ農民風情が」
それだけは言わないで。
彼等を傷付ける言葉は言わせたくない。
ぐっと拳を握って耐えれば、そんな私を面白がるように嫌な笑い声が響いた。
「聞くところに寄れば親が居ないとか」
思わず伏せていた顔をバッと上げてしまったことが駄目だったらしい。
それがまさか私なりの肯定の合図になってしまったことまで頭が回らなかった。



