「これで関係を切って頂きたい」
キラキラと光沢を輝かせた小判が畳の上に散らばると、土方さんは眉間を寄せた。
「こちらも円満に解決させたいんですわ」
「…円満、だと?」
体は治ってはいないが何とか普通に歩けるほど回復し、片眼の生活にも慣れてきた頃。
利き腕が使えないからこそ、何度食事をひっくり返してしまったか分からない。
その度に近藤さんや沖田さんに食べさせてもらう日々。
土方さんからは毎日「石田散薬」という薬をもらって忘れることなく飲んでいて。
……何に効果があるのかは不明だけれど。
「ここに50両あります。どうか金輪際、息子とは関わらないで頂きたく」
とうとう屯所にまで来た男は、変わらない丸眼鏡をくいっと触りながら襖の中へ上がった。
その男を見た沖田さんは「…やっぱり」と呟いて、冷めた目付きで見つめる。
金で解決、それがこの男のやり方だった。



