屯所に戻ったとき、日は既に暮れていた。
頬も、腕も、足も、全身を引き摺るように歩く姿は身体中が青く血だらけ。
そんな私を一番最初に目撃したのは近藤さんだった。
「梓…!!一体なにがあったんだ…!」
ふらふらと今にも倒れそうな身体は彼を目にした途端に気が緩んだのか、バタンとその場に倒れた。
「ひどい…。打撲が数ヶ所、右目は負傷、右肘は……骨折しています」
とても残忍だと、山崎 丞は唇を噛んだ。
部屋には土方さんと近藤さん。
他の幹部は呑みに出掛けているらしく、逆に良かったと思う。
「…誰が…、こんなことを…」
私の手を握った近藤さん。
そんなにも悲しい顔をさせてしまったことだけが悔しかった。
「ガキの遊びの程度じゃねえな」
「明らかに大人から受けたに間違いありません」
「強姦ってのも考えられるが、それだったら一緒にいたガキ共も同じ目に遭ってるはずだ」
「…どうやら梓だけだと」
私の右目に優しく眼帯を当てた山崎さんは、土方さんを見つめた。
彼はずっと腕を組み、ただじっと私へ視線を落としている。
───コンコン。
そんなとき、襖の先で音が響いた。
「土方さん、梓の部屋にいるんですか?巡察の報告書を提出に来ました」
「あとにしろ」
「ちょっと僕これから湯を浴びたいんです。いつも後回しにすれば怒るじゃないですか。開けますよ───」
ああ、血の匂いがする。
私からか沖田さんからか。
最近みんなからそんな匂いが強くなった。



