ぐっと拳に力をこめる。

それに気付いた男は、もっと皮肉を口から出した。



「聞いたことがあるわ。武士でもない農民が刀を持って、幕府に仕える犬だと」



違う、犬なんかじゃない。



「馬鹿な男達やなぁ。金もない、権力もない、世間の除け者の集まりが」



馬鹿じゃない。

除け者なんかじゃない。



「ふっ、侍ごっこでもしてるんちゃうか?全くお門違いも甚だしい話や」



高笑いが脳に響くと、体が勝手に動いていた。



「っ…!!」



バッ────!!!


地面の土を握り締め、皮肉しか出ないその口に投げ込む。

大ちゃんも虎吉も恐怖のあまり逃げ帰ってしまった。



「……小僧、誰に刃向かったか分かってんのか?」



男はゆらりと近付いてくる。

伸ばされた大きな影は容赦なく胸ぐらを掴み、腕を空へと上げた。


バシッ───!!!



「うっ…!!!」



強烈な平手打ち、体は地面に放られた。


懐かしい……。
そんな感覚を思い出す。

当分忘れていたけれど、私にとって毎日のような出来事だった。



「やめてください…!父さん…!!」



ガッ……!!ドガ───ッ!!!


それでも大人の人からされたのは初めて。

こんなに痛いんだと、痛みを当たり前のように感じている自分。

そんなこと思いもしなかったのに。


ああそうか、そんな痛みを教えてくれたのもあの人達だ。



「このガキ…!!なめた真似しやがって…!!」



バキ───ッ!!



「ぅぁぁ…っ!!」