食事も終わろうとしていた折。
 桐島さんが「そう言えば」と小さく零し、手を止めた。

「鍵でも閉め忘れましたか?」

「いえ、もっと重要なことを」

「重要な?」

「はい」

 首を傾げて同じく手を止めた僕に、桐島さんは手にしたままのサンドイッチを置いて言った。

「明日、記憶堂としての正式なお仕事が一件入っているのです。後学の為と銘打ちまして、神前さんには同席していただこうかと」

「……え?」

 今日一の眩しい笑顔は、思いもよらぬ形とタイミングで、嵐のように依頼を舞い込んで来た。