「いえ、地元のインターホンって、鳴らすと「ブー」って音が五月蠅く響くんですよ。だから、こっちの音にはびっくりというか、田舎との違いにちょっと感動しちゃって」

「そういうことでしたか。如何です、何度も押して噛み締めて見ますか?」

「近所迷惑と飽きがつまらないなので勘弁してください――っと、これ。即席ですが便利グッズを」

 差し出したのは、レジ袋に入れて持ってきた、その名の通りの便利グッズ。
 割りばしの先にストッキングを巻き付けた、掃除のしにくい角用のものと、ハンガーを開いてこれまたストッキングを被せただけの、棚裏用のもの。
 田舎者だと笑いたければ笑え。と、開き直る。

「……殿方もストッキングを使うものなのですか?」

 首を傾げてどうしたのかと思ったら。

「そこに突っ込むんですか。そんなわけないでしょう。まぁこれも田舎くさい話なんですけれど、実家を発つ時に母親から『使わなくなったやつ渡すけえ、何かに役立てんさい』って押し付けられて。こっちの家に、大量に保存してあるんですよ」

「まぁ。優しいお母さまではありませんか」

 どこが。
 処理するのが面倒だからって、厄介を押し付けられたに決まっている。

 と、桐島さんはもう一つ何かが気になったようで。僕の口元を指さして、

「鳥取県の方って、方言の訛りがとても強いイメージがあるのですけれど」

「方言……あぁ。意識してセーブしてるんですよ。話そうと思えば話せますけれど」

 そう言った瞬間だった。
 桐島さんの目の色が変わって、言質とったとでも言いたげに、是非是非と鼻息荒く興奮気味に迫って来た。

 近い近い。

 都会の標準語育ちは方言を話す人が好みだって聞いたことはあるけれど、どうやら桐島さんもその口だったらしい。
 いや。好みかどうかはさておいて。興味があることに変わりはないらしい。