古びたドアには、大家が付けた鍵とは別に頑丈な其れがもうひとつ付けられていた。


 しかし……、


 鼻をつく、その強烈な臭いを閉じ込めるまでは至らずに今はただ、この部屋の主が用心深い人物だったことだけを物語っているに過ぎない。




 長身の女刑事は、酷く不健康な痩せ方をしていて、細く切長の鋭い眼差しに女性らしさは見当たらず、胸板と云ったほうがしっくりくる体格だが、かろうじて顎の長さで切り揃えられた髪型と見かけを気にしないのか、更に長身を誇張するヒールのついた靴から女性なのだと判断出来る。


 そして、其れに見合った低い声で傍らの部下とおぼしき男に“バール”と指示を出したきり、その扉が開くまで顔色ひとつ変えずに何かを思案していた。






 その部屋の中で何が腐っているのか、判っていたからかも知れない。