「…君といると調子狂うんだよ」


そう言って前髪をかき上げた。


いつだったか、前もやっていたこの癖。堪らなく色気が溢れてるからやめてほしい。


私には刺激が強すぎる。


「考え改めてくれました?」


「…分かったから。そもそも彼とは何があったの」


最もな質問に、今度は私が口を噤む番になる。


「ごめん、言いたくなかったら無理して言わなくていいよ」


「…私のこと、信じてくれますか?」


先輩に過去のことを言いたくないわけじゃない。


それを知った先輩がどう思うか分からないから怖いんだ。


先輩に限ってそんなことはないと思いたいが、確証なんて無い。


事実、私の言うことを誰も信じてくれなかったのだから。