大西さんが連れて来られたのは体育館裏だった。


今は体育館内にも人がいないようで、シンと静まり返っている。


あたしとヒナは息をひそめて壁の影から6人の様子を見守った。


「お前、調子乗ってんじゃねぇぞ!」


「ちょっと可愛いからって、奏の男に手ぇ出しやがって!」


そう言ったのは奏以外のギャルたちだった。


奏は彼氏の手前なので一応はセーブしているようだ。


その様子に少しだけ安堵した。


男子たちがいなかったら事態は更に深刻になっていただろう。


「あたしは別になにもしてないけど?」


大西さんは小首を傾げてそう答えた。


風が吹いて艶やかな黒髪が嫌味のように揺れる。


そんな状況なのにその姿はやっぱり美しかった。