「蟻……?」


先生が怪訝そうな声で言う。


「入り込んでたんです」


大山君はそう答え、窓を開けて手のひらに乗っている蟻を外へ出した。


「そんなもの後でいいだろう」


先生の呆れた声を、クラスメイトの笑声が聞こえる。


その間、隣の大西さんはジッと画面を見つめて作業を続けている。


自分の彼氏がちょっと奇妙な行動を取っていても、気にしていない様子だ。


「人間の前で蟻は無力なんです。誰かに踏みつぶされるかもしれない」


「そりゃそうだけど……まぁいいか。早く授業に戻れ」


先生はガリガリと頭をかいてそう言うと教卓へと戻って行く。


それによってクラスメートたちの好奇心も引きはがされ、みんながパソコン画面に戻って行く。


あたしも授業の続きをしようと思って視線を戻した時だった。


チラリと見えた隣の席のパソコン画面には、沢山の蟻の写真が貼られていたのだ。


見間違いかと思った。