電話を切ったあと、もう一度唇を重ねられる。



そして顔を離した花平くんがめずらしく驚いたような顔をしていた。



「なんで泣きそうになってんの」

「……だっで、はじめで」

「はじめてじゃねーだろ」



ちがう、そういうことじゃないの。

ふるふると首を横に振ると、ベッドの上に雫が落ちていく。


私だってこんなときに泣くつもりはなかった。

というかこんなに泣き虫じゃなかった。


花平くんのせいだよ。



「花平くんが、はじめて……





優しい目でキスしてくれたからっ……」


コップから水があふれ出すように、花平くんへの気持ちがとまらなくて。





「好きです。私は花平くんのことが好きなんです」



誰かをこんなに想うのも、誰かを想って一喜一憂するのも、

ずっと一緒にいたいって思うのも、こんなにわがままになっちゃうのも、


もっとキスしてほしいって求めてしまうのも。



ぜんぶぜんぶ、花平くんがはじめてだったんだよ。




「ねえ、それはなんのキスですか?今回はどんな理由でキスしたんですか?」


「は、キスになんか意味でもあんの?したくなったからしてるだけ。毎回そうだけど」



「それって、」



「……言っただろ、お前に惚れてるって。好きでもないやつにこんなことすると思うか?」