村上晴江は2年1組の教室の隅でこのリベンジゲームをクリアするために早苗と菜々美の二人に話していた。



「このリベンジゲームで一番確実にゲームの勝利者になれる方法は何だと思う?

それは校門を開くスイッチを押して、堂々と校門からこの学園を出ていくことよ。

紗栄子ごときに私が殺されるなんてあり得ない。

紗栄子が何度蘇ったとしても、所詮は紗栄子、敵じゃないわ」



晴江が自信満々に言ったその言葉を早苗と菜々美は半信半疑で聞いていた。



確かに晴江は3年2組の女王で、晴江が誰かに負けたところを見たことがない。



でも、そんな負け知らずな晴江だとしても、あの生神亮治が科学の力で蘇らせた小原紗栄子に勝てるとは思えない。



紗栄子は腕力も脚力も持久力も常人の倍以上はあるだろう。



そんな化け物染みた紗栄子が、制裁の槍と呼ばれている長さ1.5メートルの黒い槍であの立花誠二を殺したのを晴江たちはハッキリと見ていた。



それでも自信が少しも揺らがない晴江は、精神的におかしいのか、それとも自分が負けるという発想が生まれつき抜け落ちているのだろう。



早苗と菜々美がそんな心配をしている中で、晴江は今の危機的な状況が楽しくて、口元にわずかな笑みを浮かべていた。



(特権階級の父を持つ私は、当然のごとく特権階級の人間になるし、父よりも世の中に価値を提供できるに決まっている。

食べ物も洋服も生活を便利にする道具も溢れ過ぎてる世の中で、物を所有することに価値はない。

今の私たちに価値があるのは、ドキドキするような夢の体験なの。

私はそんな夢のような最高傑作の物語を作って、平民どもとは違うきらびやかな世界で生きるのよ)



晴江にとってこのリベンジゲームは、作家になるという夢を実現させる糧になる。



晴江はそんなことを考えながら、心の中で紗栄子との勝負を楽しんでいた。