結局、リベンジゲームの生存者はたったの一人、野村智恵だけだった。



智恵は自衛隊に保護され、ヘリコプターに乗せられた。



そして智恵がヘリコプターの中から小さくなっていく西条学園中学を見下ろしているとき、となりに座っていた若い自衛官が智恵に話しかけてきた。



「大変な夜を過ごしたね。

君がリベンジゲーム、唯一の生存者だ。

ゲームクリア、おめでとう」



智恵はそう言って笑っている自衛官に嫌悪感を抱いた。



この人はきっと学園内にあった隠しカメラに映っている映像を、安全なところから見ていたに違いない。



泣き叫び、絶望の中で助けを求めている中学生がたくさんいることを知りながら。



智恵はそんな自衛官と心を通わせたくなくてうつむくと、自分が知りたいことだけをぼそりと訊ねた。



「このヘリコプターはどこに行く予定ですか?

私はすぐに帰れますか?」



「君はすぐには帰れないよ」



若い自衛官はそう言うと、うれしそうにこう言った。



「君が行くところは生神亮治先生の研究所だ。

リベンジゲームを生き残った君の記憶は貴重だからね。

君の記憶を今からクローン人間に移すんだ。

素晴らしいだろ。

明日にはもう一人の君が誕生するだろう」



智恵は自衛官のその言葉に答えるのも嫌になっていた。



なぜ、もう一人の自分がこの世に生まれなくてはいけないのか?



真っ先に頭の中に浮かんだその疑問の答えを考えるのも、今はもう面倒だ。



智恵はまだ悪夢が終わらない予感の中で、静かに目を閉じ、眠りについた。



そして智恵を乗せたヘリコプターは、西条学園中学を離れていった。