智恵はじっと息を殺しながら、マップ上にある青いランプを見つめていた。



そしてその青いランプが図書室から離れることを智恵は願っていたが、その青いランプは確実に図書室へと近づいていた。



智恵がどんなに願ってもその青いランプは短い渡り廊下を通って、図書室に入ってくるのは確実だった。



智恵は生きた心地もしないままに、自分が紗栄子に見つからないように目の前で光っているマイページを閉じて、自分の生死を運に任せた。



智恵は暗くなった図書室の中で固く目を閉じ、紗栄子が近づいてくる気配に意識を集中させていた。



(私は智恵がうらやましいなぁ。

智恵には優しいお父さんがいるから)



智恵ら紗栄子に怯えていたのに、頭の中で紗栄子との会話を思い出していた。



(私にはお父さんがいないから、たくさんのことをあきらめなくちゃって思ってる。

だから大きな夢を見るとか私にはあり得ないよ。

未来には無限の可能性があるとかってウソだよね。

でもせめて、手が届きそうな小さな幸せくらいは私も欲しい。

それ以上を欲しいとは思わないから……)



紗栄子が図書室に入ってきた足音が聞こえた。



その瞬間に智恵の心臓がドキリと跳ねた。



あと数分が過ぎれば、今日も朝日が昇り、自分はリベンジゲームから解放されるのにと、智恵は心の中で思っていた。