(どうして私は紗栄子に見つかるのを怯えながら図書室の隅にいるのだろう。

元の私たちはいつも一緒にいて、互いに何気ないことを話していたのに……。

紗栄子と話している時間がとっても楽しかったはずのに……)



智恵は過去の記憶をさかのぼり、感傷に浸りながら静かに目を開けると、ダウンロードしてある西条学園中学のマップを開き、そのマップ上にある青いランプの位置を確かめていた。



(マップ上にあるこの青いランプは紗栄子の位置を示している。

だとしたら、紗栄子は私の近くにいる。

私に復讐するために、私の居場所を探している……)



紗栄子を示す青いランプはしばらくの間、西門の前で止まって動かなかった。



でも、約一時間前から西門の前に止まっていた青いランプは、ゆっくりと動き出している。



紗栄子が西門の近くにずっといた理由も、一時間前からようやく動き出した理由も智恵には少しもわからなかった。



智恵は日の出の時刻までその青いランプが自分に近づいてこないで欲しいと願っていたが、その青いランプは確実に智恵の方へと近づいていた。



智恵は紗栄子が近づいてくることに恐怖を感じ、図書室を抜け出して、どこか別の場所に逃げることも考えた。



でも智恵が最終的に下した決断は、運を天に任せ、この図書室の隅に隠れ続けることだった。



この学園内には紗栄子だけでなく、殺人ネズミの集団もいる。



そんな危険がたくさんある西条学園中学の中で、無闇に動き回るのは得策ではないだろう。



午前5時30分頃になれば、今日も朝日は昇るはずだ。



自分はその時刻を息を殺して待てばいい。



その時刻はあと少しで来るのだから。