(もしも私が生きたいと心から強く願ったら、私はもう少しだけ生きていられる?

あとほんの少しだけでいい……。

私の復讐が終わるまで……)



このまま目を閉じていれば、自分は死ぬという予感があった。



でも紗栄子は、今、身体中に感じている死ぬほどの苦しみを抱えながらも生きていたいと願った。



復讐なんて、本当は何も生み出すことのない不毛な行為なのかもしれなかった。



他のクラスメイトたちが地獄に落ちても、自分が救われないこともわかっていた。



それでも自分が復讐を止めようとしないのはなぜなのか?



紗栄子は自分の心に問いただした。



(私は他の子たちと比べて何も持たない人だった。

だから私は大きな幸せをあきらめて、小さな幸せを手にしたいって思ったんだ。

でも、そんな私の小さな幸せも取り上げられて、私には何もなかった。

私には何も……)



「リベンジゲームは私の勝ちよ」



死ぬほど憎い晴江の声が紗栄子の耳に届いていた。



「サヨナラ、負け犬。

結局、どんなことをしても、あなたは私に勝てないの」



紗栄子は訪れようとする死を拒むようにゆっくりと目を開けた。



すると、自分に背を向け、西門の方に歩き出そうとする晴江が見えた。



紗栄子はそんな晴江を逃がすまいと、最後の力を振り絞って右手を伸ばし、その場を去ろうとしている晴江の足首を右手で強く握りしめた。