(晴江、あなたは村上家の長女で特別な人間なの。

世の中の大半の人たちは存在価値のない人ばかり。

でも、晴江、あなたは違うのよ。

あなたは選ばれた人だから)



晴江の頭の中に幼い頃から母に聞かされていた言葉がふとよぎった。



自分は特別な人間で、選ばれた人間だ。



凡人共は自分を光り輝かせるためのみに存在している。



だから自分は誰にも負けない。



絶対に!



緊迫した空気が流れる中、二人の戦いが始まったのは一瞬だった。



重傷を負い満身創痍なはずの紗栄子が制裁の槍を握りしめ、ものすごい速さで晴江に迫ってきたのだ。



晴江に迫ってくる紗栄子の形相はまるで悪魔に取りつかれた鬼のようで、身体中から殺気を放っていた。



晴江はそんな紗栄子をにらみつけ、紗栄子を返り討ちにするために、紗栄子の動きを予測していた。



(紗栄子がどんな風に攻めてこようと、その動きに惑わされるな。

紗栄子は必ずあの制裁の槍で私を殺しにくる。

私はあの槍にさえ集中していればそれでいい)



剣道の心得はなかったものの、晴江には剣道の部長でさえも剣道で打ち負かす自信があった。



その道に長けるために必要なのは努力ではなくイメージだ。



自分が勝利するその瞬間のイメージ。



晴江はいつどんなときでも、そのイメージが浮かばないことが一度もなかった。



(来な、紗栄子。

あなたと私の才能の違いを教えてやるから)



紗栄子が晴江との間合いに入り、制裁の槍が晴江の首めがけて伸びてきた。



晴江はそれを感じるや否や、シャイニングサーベルを高速で繰り出し、紗栄子の槍を振り払った。



その瞬間、紗栄子には驚きの表情が、そして晴江には勝利を確信した笑みが浮かんだ。



晴江は制裁の槍を振り払ったシャイニングサーベルを紗栄子の頭めがけて上段から振り下ろした。