早苗はたいして働きもしない両親の元で育った一人娘だ。



西条学園中学に入学したばかりの早苗でも、今の世の中が働かずとも衣食住が足りると知っていたが、それでも働かない両親が嫌いだった。



そして自分が世間で言うところの底辺の存在であることも何となく理解していた。



自分たちの家族はAIやロボットが作り出す富に依存して生きている寄生虫みたいな存在だ。



つまり、自分たちは世間で言うところの『ロボットのすねかじり』だ。



早苗はそう思うと、自分が生まれてきた最悪の環境を憎んでいた。



そんな早苗は中学に入学してから、初めて特権階級の一族という人に出会った。



その人の名前は村上晴江。



晴江の周りには孤高の雰囲気が漂い、早苗はそんな晴江から凛としたプライドを感じていた。



(あの人が特権階級の一族の村上晴江。

背が高い美少女で、身にまとっている空気が私とは全然違う。

もしも生まれた環境が違っていたら、私もあの人みたいになれた?

悔しいよ……。

私もいつか、あんな人になってみたい)



早苗が底辺から見上げた雲の上の存在は、本当にまばゆくて、早苗の胸をしめつけた。



年も変わらない、学校も変わらない。



でも生まれた環境が圧倒的に違っていた。



憧れと蔑み。

まばゆさと暗闇。

雲の上と底辺。

村上晴江と舘野早苗。



早苗は特権階級の一族である村上晴江に魅了されていた。



自分もいつか村上晴江になりたい。



そんなことを思いながら。