番犬ルドルフと晴江の距離が30メートルまで縮まったとき、番犬ルドルフは牙をむき出しにして晴江の方へと走り出した。



巨大な黒い肉体が自衛隊の照らすライトの中で、晴江の方に猛然と迫っていた。



晴江は胃がキュンと跳ね上がるような緊張の中で、番犬ルドルフのテリトリーを知るためにバックステップで西門から遠ざかった。



(私の読みはいつも正しい。

私には番犬ルドルフのテリトリーが見えている)



晴江はさっき頭の中で思い描いた番犬ルドルフのテリトリーの線を強く意識した。



そして番犬ルドルフが襲いかかってくる前にそのテリトリーの線の外に体を逃がした。



でも番犬ルドルフはそんな晴江の予想を覆し、走るスピードを緩めたりはしなかった。



晴江は迫りくる黒くて巨大な恐怖の塊を意思のこもった強い瞳でにらみつけ、シャイニングサーベルを握りしめた。



(番犬ルドルフのテリトリーは予想よりも広い。

でも、殺られるわけにはいかない。

リベンジゲームをクリアするのは私だから)



晴江は息を止め、番犬ルドルフの動きに集中していた。



そして番犬ルドルフの牙に注意しながら、後ろに大きく下がったとき、番犬ルドルフの足がピタリと止まった。



晴江はやっと見つけた番犬ルドルフのテリトリーに心の中でニヤリと笑い、シャイニングサーベルを真横に振り抜いた。



すると、番犬ルドルフの肩の肉が大きく裂けて、真っ赤な血が吹き出した。



「早苗、菜々美、番犬ルドルフのテリトリーを見つけたよ。

危険はないからこっちに来な」



「でも、晴江……」



「びびってんじゃねぇよ!

絶対的な安全地帯を私が今から教えてやる。

私の言うとおりにしたら、お前たちは絶対に助かる!」



晴江が自信満々にそう言うと、早苗と菜々美の気持ちに変化が起きた。



今まで晴江が言ったことが実現しなかったことがあっただろうか?



晴江の言うとおりにすれば、今回も自分たちはきっと助かる。