(恐れるな。

私の考えはいつも正しい。

あの番犬ルドルフは西門から一定の距離までしか動けない)



晴江は自分にそう言い聞かせると、番犬ルドルフが動けると予想される範囲に頭の中で線を描いた。



そしてその外側を自分の安全地帯として、番犬ルドルフと戦う作戦を考えていた。



(命をかけてバケモノと戦う機会なんて、生涯で何度ある?

私はこの貴重な体験をいつの日か自分が作る物語に生かしてみせる。

私は偉大な作家になるの。

偉大な父のように世界の中心に君臨するために)



晴江と番犬ルドルフの距離が縮まり、張り詰めた空気の緊張感が増していった。



番犬ルドルフの正確なテリトリーはわからない。



その読みを外したならば、晴江はきっと助からない。